もうひとつ、おもしろい挿話がある。
ごくまれにリツヤベイを訪れる人があると、ジムは時計を手に浜辺に出迎え、必ずその時の正確な時間を確認したという。
時間も関係ないような原始的な生活をしながら、なお彼の時計が正確な時間を刻み続けなければならなかったということは、一体どういうことだったのだろうか。
オハイオ州で生まれ、大きな富も得たが事業にも失敗したという、過去の生活とふっ切れない時間が、彼の中でなお続いていたというのだろうか。人間は滑稽でいて悲しい。
1939年の春、彼のすべての時計は時を止めた。
伝説の怪物は、忘れた頃に姿を現わして牙をむくことがある。
1958年の7月9日、カア・リツヤの山が動いた。
激しい地震。9千万トンの岩と崩れた氷河が湾に落下し、高さ40メートルの大津波が、時速160キロのスピードでリツヤベイを駆け抜けていったという 。
星野道夫が、まだアラスカも知らない6歳の少年だった頃のことだ。
のちにリツヤベイを訪ねたときの感動を、彼は次のように書いている。
「砂浜に、かすかなクマの足跡が続いていた。その跡をたどると、見晴らしの良い岩場に出た。そこから、ジムが暮らした小島が見渡せた。目の前には、氷河を抱いたフェアウェザー山脈が5000メートルの高さでそびえている。ため息のでるような美しさだった。エデンと危険は、きっと隣り合わせ
Dream beauty pro 脫毛に存在しているのかもしれない」